測れないものを、どう扱うのか
効率は手段だったはずが、目的になりました。私たちに解決できることと、できないことを書きます。
目次
この連載では5本かけて、現場の情報が経営に届かない構造を追ってきました。最後に、私たちに解決できないことを書きます。
先にその手前を整理します。
効率は、いつから目的になったのか
効率は手段です。限られた資源で、より多くの価値を出すための手段でした。
日本経済が停滞し続けるなかで、余裕が失われました。勝たなければ脱落するという前提が広がり、他者への配慮や利他が「コスト」として処理されるようになりました。
そして測定が普及しました。数値化できるものが増えたぶん、数値化できないものの立場が悪くなりました。
測ったものが、最適化されます
指標が目標になると、その指標は指標として機能しなくなる。この現象は古くから知られています。
問い合わせ対応を「件数」で測る → 1件を短く切る。再問い合わせが増える
開発を「実装した機能数」で測る → 作らない判断がされなくなる
営業を「訪問件数」で測る → 会いやすい相手にだけ会う
どれも、測定が悪いのではありません。測られたものが最適化される、という性質がそのまま働いているだけです。
問題は、測れないものが同時に切り捨てられることです。判断の質、現場の機微、長期の信用、断る勇気。評価指標に乗らないので、やってもやらなくても同じになります。同じなら、やらないほうが効率的です。
こうして、効率を追うほど、効率の前提だったものが失われていきます。
5本は、同じ構造の別の面でした
月 報告が加工される 削られたことが記録に残らない
火 原因が外に見える 内部の判断履歴が並んでいない
水 共通言語が崩れる 暗黙知が使われた痕跡が残らない
木 時間で代用される 判断の質が測れない
金 測れないものが消える ★ 記録がないので、評価もできない
5本とも、記録の不在に行き着きます。情報が届かないのではなく、届いたあとに何も残らない。残らないから検証できず、検証できないから測れず、測れないから切り捨てられる。
ALTEVOはこう考えています
測れないものを、測れるようにしようとは考えていません。
判断の質を点数化する試みは、たいてい失敗します。点数化した瞬間、点数が最適化され、元の性質が失われるからです。測定は、対象を変質させます。
私たちが目指しているのは、測ることではなく、後から辿れるようにすることです。
測る いま数値にする ★ 変質する
辿る 後から確認できる状態にする ★ 変質しない
いつ、どの前提で、何を決め、何を見送ったか。これが残っていれば、評価は成果が出た時点で行えます。先に点数をつける必要はありません。
共進化パートナーで最初に行うのは、この経路を7つの領域から確認する作業です。新しい仕組みを入れる前に、いま何が残っていて何が残っていないかを見ます。残っていないものが多い場合、システムを入れても記録は増えません。
私たちに解決できないこと
ここからが、この連載の本題です。1本目で予告した部分です。

最後の1つは、原理的に不可能だと考えています。測れないものは測れません。私たちができるのは、測らずに扱う方法を用意することだけです。
そして最初の3つは、技術ではなく人の側にあります。ここを引き受けられると言う会社があれば、その主張は検証してください。仕組みで文化が変わった事例は、私たちの知る範囲では、文化のほうが先に変わっています。
反証:記録がなくても回っている組織があります
例外を書きます。記録が何もないのに、健全に回っている組織は実在します。
人数が少なく、全員が同じ場所にいて、判断が数分で共有される場合。この規模では、記録より会話のほうが速くて正確です。記録を導入すると、速度が落ちるだけになります。
境界はおおよそ、経営者が全員の仕事を把握できる人数です。それを超えると、把握が推測に変わります。推測で回している状態が続くと、ある日ずれが表面化します。
もう1つ。この連載で書いてきたことは、すべて「見えるようにする」方向の提案です。見えるようになると、見たくないものも見えます。それを引き受ける準備がないまま可視化すると、組織は防御に回ります。数字が良く見えるように運用され、記録は形式だけになります。
準備ができているかどうかは、私たちには判断できません。そこは経営の判断です。
次の連載へ
この連載では、情報が届かない構造を扱いました。次は、届いた情報も含めて、組織に残らないという話に入ります。
人が辞めるとき、失われるのは作業ではありません。判断の基準ごと消えていきます。
次の連載では、3本かけてそこを扱います。
この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。