読了 約6分 構造課題

投入時間は、何の代理指標だったのか

長時間労働が評価されるのは、文化が遅れているからではありません。他に測れるものがないからです。

連載 現場は、経営に届かない 第4話/全5話
判断の質が測れないため投入時間が代理指標として使われ続けている構造の図
目次
  1. 制度は入りました。文化は残りました
  2. 代理指標としての時間
  3. 代理指標は、置き換えられるはずでした
  4. そして、代理指標は自分の前提を壊します
  5. ALTEVOはこう考えています
  6. 反証:総投入時間が成果に直結する局面はあります
  7. 次回

前回、言語化されないものは評価されないという話を書きました。評価されないものは、測れるもので代用されます。

日本の組織で最も長く代用され続けてきたのが、投入時間です。

制度は入りました。文化は残りました

働き方改革は、制度としては導入されました。上限規制があり、勤怠は記録され、数字としては減っています。

それでも、「遅くまで残っている人が頑張っている」という感覚は残っています。

これを文化の遅れとして説明すると、対策は「意識改革」になります。前回と同じ構造です。意識で変わるなら、制度が入った時点で変わっています。

代理指標としての時間

管理する側の立場で考えます。部下の仕事の質を、何で測るか。

測りたいもの   判断の質、設計の筋の良さ、対応の適切さ
測れるもの     ★ 出社時間、退社時間、稼働時間、対応件数

測りたいものは、成果が出るまで分かりません。設計判断が正しかったかどうかは、半年後や数年後にしか判明しません。しかし評価は毎月あります。

そこで代理指標(proxy)が使われます。測れないものの代わりに、相関がありそうで、その場で測れるもの。投入時間は、その条件を満たします。

これは怠慢ではありません。測れないものを評価しなければならない立場で、最も安価に手に入る手がかりです。

代理指標は、置き換えられるはずでした

本来、代理指標は暫定です。本来測りたいものが測れるようになれば、置き換わります。

置き換わっていません。理由は2つあります。

1つ目。判断の質は、いまも測れていません。成果と判断の距離が遠く、間に運が挟まります。良い判断が悪い結果を生むことも、その逆もあります。

2つ目。判断の履歴が残っていません。そもそも「いつ、どの前提で、何を決めたか」が記録されていなければ、後から質を評価することは原理的に不可能です。測る技術の問題ではなく、測る対象が存在しない状態です。

そして、代理指標は自分の前提を壊します

投入時間を増やす方向に組織が最適化されると、睡眠時間が削られます。

睡眠不足が判断の質を下げることは、広く知られています。つまり、判断の質が測れないから時間で代用し、その時間を増やした結果、判断の質が下がる。

代理指標が、代理しているはずの対象を壊す

代理指標が、代理しているはずの対象を壊しています。これは人道の問題であると同時に、経営指標として明確に不合理です。

ALTEVOはこう考えています

投入時間による評価を、いきなりやめるべきだとは考えていません。

代用をやめるには、代わりが要ります。何も用意せずに時間の評価だけ外すと、評価の根拠が消えて、印象で決まるようになります。それは代理指標より悪い。

先に用意すべきものは、判断の履歴だと考えています。いつ、どの前提で、何を決め、何を見送ったか。これが残っていれば、成果が出た時点で遡って評価できます。判断が正しかったのか、前提が変わったのか、運だったのかを切り分けられます。

私たちが企業搭載型BIで扱おうとしているのは、この履歴です。時間ではなく判断を、経営の対象にする。そのための前提を整えることが、設計の目的です。

ただし、これは仮説です。

反証:総投入時間が成果に直結する局面はあります

例外を明示しておきます。立ち上げ期には、投入時間が成果とほぼ比例します。

顧客がゼロの段階では、接触した数が結果を決めます。試行の回数が学習量になります。この局面で効率を優先すると、単に何も起きません。

問題は、この状態が恒常化することです。立ち上げ期の働き方を、10年続けている組織があります。局面が変わったのに、評価の仕方だけが残っている。

もう1つ。判断の履歴を評価に使うと、記録が歪みます。前回も書きましたが、評価される可能性がある記録は、評価を意識して書かれます。「見送った」と書かず「保留した」と書くようになる。記録を評価に使わない線引きは、仕組みの外側で守るしかありません。

次回

測れないものは、切り捨てられます。

判断の質、現場の機微、人への配慮、長期の信用。数値化できないものは評価指標に乗らず、乗らないものは「非効率」として扱われます。

効率は手段だったはずですが、いつからか目的になりました。

次回は、そこを扱います。この連載の最後の1本で、この構造に対して私たちに解決できないことを書きます。

次回

次回は「効率という宗教」を扱います。測れないものを、どう扱うのか。

この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。

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