逆回転は、どこで止められるのか
地方の三重苦は、条件が変われば逆転しうる構造でもあります。ただし、止められる場所は限られています。
目次
ここまで3本、強みが不利に働く構造を扱ってきました。同じ逆転が、地域の単位でも起きています。
三重苦と呼ばれるもの
地方の中小企業が抱える課題として、3つがよく挙げられます。
人口の流出
消費の減少
物流コストの増加
どれも事実です。そして、どれも個別の企業の努力では動かせません。
ただし、この3つは性質が違います。
条件が変われば反転するものと、しないもの

人口の流出 ★ 働く場所の制約が外れれば、反転しうる
消費の減少 ★ 売り先が地域内に限られなければ、別の話になる
物流コスト ★ 距離は変わらない。反転しない
最初の2つは、前提条件が変わると意味が変わります。
リモートワークが選択肢になれば、住む場所と働く場所を分けられます。ECやD2Cを使えば、売り先は地域の外になります。どちらも、この10年で現実的な手段になりました。
3つ目は変わりません。距離は距離のままです。重量物を扱う事業では、この制約は消えません。
つまり、三重苦のうち2つは構造が変わり、1つは変わっていない。ここを分けずに「三重苦だから厳しい」と括ると、動かせる部分まで動かせなくなります。
地方にこそ、本物を持つ企業が多い
地方には、長く続いてきた製造業や加工業が数多くあります。技術の蓄積があり、品質も高い。
ただ、この連載で扱ってきた問題が、そのまま当てはまります。
丁寧さが、速度の市場で評価されない
謙虚さゆえに、外に知られていない
続けてきた手段が、理由ごと固定されている
そして、それを翻訳する相手が地域内にしかいなかった。元請けとの関係が長く、何に使うかを考える工程が自社の外にある。前の連載で書いた構造です。
売り先が外に広がることと、翻訳ができるようになることは、別の作業です。ECを始めても、説明が変わらなければ結果は変わりません。
ALTEVOはこう考えています
地方の企業に、特別な方法があるとは考えていません。
扱うべきことは、この連載で書いてきたことと同じです。何を防いでいるのかを記録する。できないことを書く。目的と手段を分ける。
違うのは、順序です。
1 ★ 売り先の制約が、いまも本当に存在するかを確かめる
物流コストが効く事業なら、制約は残っている
情報とデータで完結する部分なら、すでに外れている
2 外せる部分から、翻訳を始める
3 翻訳できた範囲で、売り先を広げる
1を飛ばすと、2と3が空振りします。制約が残っている領域でECを始めても、物流コストで成立しません。
企業搭載型BIで扱おうとしているのは、自社の事業のどこに地理の制約が効いていて、どこには効いていないかを分けられる状態です。
全部が制約されている会社は、たぶんありません。分けていないだけです。
ただし、これは仮説です。
私たちに解決できないこと
この連載でも、できないことを書いておきます。
★ 人口の流出そのもの
★ 地域の消費の回復
★ 物流コストの構造
★ 地域内の商習慣や、取引の慣行
どれも、1社の仕組みで動く対象ではありません。
そして、もう1つ。「デジタルを使えば地方は再生できる」という話にはしたくありません。
リモートワークもECも、手段として有効です。ただ、それが機能するのは、地理の制約が外れている領域に限られます。手段の有効性と、適用できる範囲は別の話です。
この記事で書けるのは、制約を分けると動かせる部分が見える、ということまでです。
反証:分けても、動かせない場合があります
限界を書きます。制約を分けた結果、ほぼ全部が制約されている事業は実在します。
重量物の加工、生鮮品、現地での施工を伴う工事。これらは、距離の制約が事業の中心にあります。分けても、外せる部分がほとんど残りません。
この場合に必要なのは、販路の拡大ではなく、地域内での地位を確かなものにすることです。外に出る話と、中で強くなる話は別です。
もう1つ。ECやD2Cは、始めれば売れるものではありません。販路が広がると、競合も全国になります。地域内で選ばれていた理由が、全国では通用しないことがあります。
制約が外れることと、競争が有利になることは、別のことです。
次回で、この連載は終わります
この6週間で、日本経済の構造的課題を25本にわたって扱いました。
1本目に、こう書きました。
これを25個の問題だとは考えていません。 1つの構造から出ている、25の症状だと考えています。 その構造が何かは、最後に書きます。
次回、そこに答えます。
この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。