謙虚さと発信力は、両立できるのか
主張しない企業は、情報が溢れる環境では存在しない企業と同義になります。ただ、謙虚さを捨てる必要はありません。
前回、見えない丁寧さは守れないという話を書きました。では、見せればいいのか。
ここで、もう1つの美点がぶつかります。
謙虚さは、美徳です
自分から主張せず、仕事で示す。日本企業で長く評価されてきた姿勢です。
ただ、情報が溢れる環境では、主張しない企業は「存在しない企業」と同義になります。良いものを作るだけでは、もはや誰にも届きません。
この指摘は、繰り返されてきました。そして、たいていこう続きます。「だから発信しましょう」。
ここで多くの会社が止まります。
止まる理由は、技術ではありません
発信の方法が分からないから止まるのではありません。
発信する ★ 自分を大きく見せることだ、と感じる
謙虚さを守る ★ 自分を大きく見せないことだ、と感じる
この理解だと、2つは必ず矛盾します。矛盾するものを同時にやれと言われても、動けません。
問題は、「発信」という言葉が2つの別の行為を指していることです。
2つの発信を分けます

A 自分を大きく見せる発信
実績以上に見せる/できないことを言わない/比較で優位を示す
B ★ 事実を置く発信
何をしているか/何ができないか/どの条件で成立するか
謙虚さと矛盾するのはAだけです。
Bは、むしろ謙虚さの延長にあります。できないことを書く、適用範囲を限定する、条件を明示する。これらは自分を大きく見せない行為です。
前の連載で、シグナリングという考え方を扱いました。質の低い側が真似すると損をする行動だけが、質を伝える手段になる。Bはまさにそれに当たります。
つまり、謙虚な会社ほど、Bの発信に向いています。
「言わない」と「書かない」は違います
もう1点、区別が必要です。
言わない ★ 自分から売り込まない。姿勢の話
書かない ★ 判断材料が外に存在しない。情報の話
謙虚さが要求しているのは前者です。後者まで含めてしまうと、相手が判断できない状態を自分で作っていることになります。
買い手は、技術の中身を評価できません。できるのは説明を評価することだけです。説明がなければ、評価のしようがない。
書くことは、売り込むことではありません。相手に判断材料を渡すことです。
ALTEVOはこう考えています
発信の量を増やすより、書ける事実を増やすほうが先だと考えています。
何をやったか
どの条件で成立したか
★ どこでは成立しなかったか
3つ目が最も価値があります。成立しなかった条件を書けると、成立する条件の説明が具体になります。そして、これは自分を大きく見せる行為ではありません。
私たちがこの連載で毎回反証を入れているのは、丁寧さの表明ではなく、それ以外に質を伝える手段がないからです。これは9月8日の記事に書いたとおりです。
ただし、これは仮説です。
反証:Bだけでは、届かない場合があります
限界を書きます。事実を置くだけの発信は、地味です。
視界に入っていなければ、質の識別以前の問題です。そして視界に入るには、ある程度の量と、目を引く要素が必要になります。
量が足りていない ★ まず量。Bの純度にこだわる段階ではない
届いているが動かない ★ 質の識別の問題
見分ける目安は、同じ相手から2回目の接触が起きているかどうかです。
もう1つ。Bの発信には、書ける事実が必要です。実績が少ない段階では、書くものがありません。この場合、発信を工夫するより、書けることを作るほうが先です。
順序としては、事実を増やす、範囲を確かめる、書く。この3つです。書き方の工夫は、最後に来ます。
次回
発信を続けていても、やり方そのものが古くなることがあります。
同じ場所で長年続けてきた姿勢は、信頼の源泉です。ただ、それが適応の遅れになる場合があります。
次回は、そこを扱います。守るべきものと変えるべきものを、どう分けるか。
この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。