読了 約6分 構造課題

後継者は見つかりやすくなった。それでも、会社は減っている

後継者不在率は改善を続けています。一方で、休廃業は過去最多です。引き継がれているものと、引き継がれていないもの。

連載 知は、組織に残らない 第2話/全3話
後継者不在率が改善する一方で休廃業・解散が過去最多となっている矛盾と、承継されるものとされないものを示した図
目次
  1. 2つの数字が、逆を向いています
  2. 承継されるものと、されないもの
  3. 理由がないと、変えていいのか分からない
  4. ALTEVOはこう考えています
  5. 反証:判断基準以前の問題もあります
  6. 次回

前回、人が辞めたときに残るのは使われ続けている知だけだ、と書きました。人が退く場面で最も大きいのは、経営者の交代です。

2つの数字が、逆を向いています

まず、事実を並べます。

後継者不在率は、改善しています。帝国データバンクの調査では、2025年の後継者不在率は50.1%で、7年連続で低下しました。後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社です。

一方で、会社は減っています。東京商工リサーチの調査では、2025年の休廃業・解散は6万7,210件で、過去最多を更新しました。休廃業・解散した企業の代表者の年齢は、60代以上が90.6%を占め、80代以上も34.0%と初めて3割を超えています。

後継者不在率      50.1%    7年連続で改善(帝国データバンク 2025年11月)
休廃業・解散      6万7,210件  過去最多(東京商工リサーチ 2026年1月)

後継者は見つかりやすくなったのに、退出は増えている。この2つを同時に説明できる理由を考えます。

承継されるものと、されないもの

事業承継で引き継がれるものは、はっきりしています。

承継されるものと、されないもの

前者は書類で移せます。後者は、先代の頭の中にしかありません。

後継者は、会社を受け取った時点では、判断の結果は持っているのに、判断の理由を持っていません。

理由がないと、変えていいのか分からない

判断の理由が分からない状態で経営を始めると、2つの道しか残りません。

先代のやり方をそのまま守る    ★ 状況が変わっても変えられない
先代のやり方を全部捨てる      ★ 守るべきものまで失う

どちらも、先代の判断のうち「何が今も有効で、何が古くなったか」を区別できないことから来ています。

後継者は見つかった。しかし継いだ事業を、自分の判断で続けられない。数字の矛盾は、このあたりに理由の一端があるように見えます。

⚠️ ただし、ここは推測です。休廃業の理由を後継者の判断力に帰属させる統計は、手元にありません。2つの数字が同時に起きている、という事実だけが確かです。

ALTEVOはこう考えています

承継の準備は、株式と地位の移転より先に、判断の理由の棚卸しから始めるべきだと考えています。

先代が在籍しているうちに、主要な判断を一覧にします。取引先ごとの条件、価格の根拠、断った案件とその理由。すべては無理なので、後戻りに費用がかかるものから順に、前提を1行ずつ残します。

これは先代の判断を「正しかった」と記録する作業ではありません。どの前提で下された判断なのかを残す作業です。前提が分かれば、後継者は「前提が変わったので変える」「前提が同じなので守る」を自分で判断できます。

ただし、これは仮説です。

反証:判断基準以前の問題もあります

同じ東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業の黒字率は52.8%でした。裏返せば、約半数は赤字での退出です。

この場合、問題は判断の理由が引き継がれないことではありません。事業そのものの収益性です。判断の棚卸しをしても、赤字の事業は続きません。

見分ける目安は、承継の時点で事業が黒字かどうかです。黒字なのに続かないなら、引き継がれていないものがあります。赤字なら、判断の棚卸しより先に、事業の見直しが必要です。

もう1つ。先代の判断をすべて残すと、後継者の裁量を縛ります。記録された判断は、守るべき規範として読まれがちです。「前提を残す」と「従わせる」は、紙一重です。

次回

判断の理由が引き継がれない、という話をしてきました。その理由は、そもそも判断が生まれた過程のほうにあります。

検索すれば答えが出る。生成すれば形になる。過程をスキップして、結果だけが手に入るようになりました。

次回は、そこを扱います。過程を省いたとき、何が一緒に消えるのか。

次回

次回は「プロセスの消失と道徳の欠落」を扱います。過程を省いたとき、何が一緒に消えるのか。

この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。

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