読了 約6分 構造課題

知は、どこに残っているのか

人が辞めると、判断の基準ごと消えていきます。記録を増やしても残らない会社があるのは、なぜか。

連載 知は、組織に残らない 第1話/全3話
組織の知が、人の頭・文書・システム・日々のやり方の4か所に分かれ、人が辞めたときに残るものと消えるものを示した図
目次
  1. 「育てた人材が辞める」の前に
  2. 知は、4つの場所にあります
  3. 記録しても、残らないことがあります
  4. ALTEVOはこう考えています
  5. 反証:人に紐づくことが強みの仕事もあります
  6. 次回

前の連載では、現場の情報が経営に届かない構造を扱いました。ここからは、届いた情報も含めて、組織に残らないという話です。

先に1つ置いておきます。知が残る会社と残らない会社の差は、記録の有無ではありません。この連載の最後の1本で、その差が何かを書きます。

「育てた人材が辞める」の前に

優秀な人が大企業やフリーランスに移り、組織の力が落ちる。この現象はよく語られます。多くの場合、話は「定着率を上げよう」に向かいます。

それ自体は正しいと思います。ただ、辞めないことを前提に組織を作ると、辞めたときに何も残りません。

人が辞めることは、止められません。止められるとしたら、辞めたときに何が残るかのほうです。

知は、4つの場所にあります

組織の知は、1か所にまとまっていません。

組織の知は4つの場所に分かれている

多くの会社で、知は人の頭に偏っています。そして人が辞めた瞬間に、その部分は消えます。

記録しても、残らないことがあります

「だから文書に残しましょう」という結論になりがちです。ここに落とし穴があります。

文書は残ります。ただし、読まれません。マニュアルは作られた時点から古くなり始め、半年後には現場の実態と合わなくなる。合わない文書を見た人は、次から見に行きません。

システムに入れても同じことが起きます。データは残りますが、なぜその設定なのかという理由は残りません。前任者が辞めたあとのシステムは、動いてはいるが誰も変えられないものになります。

人の頭        辞めたら消える
文書          残るが、読まれない
システム       残るが、理由が分からない
日々のやり方   ★ 使われ続けている限り、残る

知が残るのは、使われ続けている場所だけです。保管されている場所ではありません。

ALTEVOはこう考えています

「記録を増やす」ではなく「使われる場所に置く」が必要だと考えています。

判断の前提は、判断が行われる場所の隣にあって初めて読まれます。別のフォルダに保存された引き継ぎ書は、必要な瞬間に開かれません。見積もりを作る画面に「この取引先は締め日が違う」と1行出ていれば、それは毎回読まれます。

知を移すのではなく、知が使われる瞬間に、その前提が隣に出てくる状態を作る。私たちが設計の対象にしているのは、そこです。

ただし、これは仮説です。

反証:人に紐づくことが強みの仕事もあります

例外があります。職人の技能や、高度な専門職の判断は、人から切り離せません。

切り離せないものを無理に文書化すると、形だけのマニュアルができあがります。本人は書く時間を取られ、読む人は役に立たない。両方が損をします。

こうした仕事では、知を残すのではなく、育てる経路を残すほうが正しい。誰に何年ついて、どの段階で何を任されたか。人から人へ移る道筋のほうを記録します。

もう1つ。「辞めても回る組織」を目指しすぎると、人が辞めやすくなります。自分がいなくても回ると分かれば、残る理由の1つが消えるからです。代替可能性と、本人の居場所は、しばしば引っ張り合います。

次回

人が辞める問題の、最も大きな形があります。経営者が退くときです。

後継者が見つかっても、事業が続かない会社があります。引き継がれるのは株式と地位で、判断の基準は引き継がれていません。

次回は、そこを扱います。引き継げるのは、技術か判断基準か。

次回

次回は「事業承継・後継者断絶」を扱います。引き継げるのは、技術か判断基準か。

この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。

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