差がついたのは、技術力か、判断か
AIを使える会社と使えない会社の差は広がっています。ただ、分かれ目は技術の習得ではないかもしれません。
目次
前の連載では、数字が実態を映していない構造を扱いました。ここからは、作ったものの価値が外に伝わらないという話です。
先に1つ置いておきます。「良いものを作れば伝わる」が成立しなくなった理由は、発信量にはありません。この連載の最後の1本で、そこに戻ります。
道具は、同じものが手に入ります
生成AIは、規模に関係なく使えます。月額数千円で、大企業と同じモデルを動かせる。導入の障壁は、ほぼ消えました。
それでも、使える会社と使えない会社の差は広がっています。
道具が同じで差がつくなら、差の原因は道具の外にあります。
「使えない」の中身は、たいてい2つに分かれます
相談を受けていると、同じ言葉が別の状態を指していることに気づきます。

状態A 何に使えるか分からない ★ 用途が決まらない
状態B 使ってみたが、定着しない ★ 任せる範囲が決まらない
AとBでは、必要なものが違います。
状態Aは、情報の問題です。事例を見れば進みます。
状態Bは、判断の問題です。ここで止まっている会社のほうが、実際には多い。
定着しない理由は、たいてい境界の不在です
試しに使ってみた。それなりに動いた。それでも業務に入らない。
理由を掘ると、同じところに行き着きます。どこまでAIに任せ、どこから人が判断するかが決まっていない。
決まっていないと
使う人が、毎回その場で判断することになる
判断の基準が人によって違うので、結果がばらつく
ばらつくので、信用されない
信用されないので、使われなくなる
この連鎖は、技術の精度とは関係なく起きます。精度が上がっても、境界が決まっていなければ同じ場所で止まります。
差は、決められる会社と決められない会社の間にあります
境界を決めるには、その業務で何が許容できないかを言語化する必要があります。
この分類は間違っていても、後で直せる
この判断は間違えると、取引先に迷惑がかかる
この数字は、間違えると決算に影響する
この3つを区別できる会社では、1つ目からAIに任せられます。区別できない会社では、全部が「間違えてはいけないもの」になり、結局どこにも任せられません。
技術力の差ではなく、自社の業務を分類できるかどうかの差です。
ALTEVOはこう考えています
AIの導入を、技術の導入として扱わないほうがよいと考えています。
私たちが最初にやるのは、ツールの選定ではありません。その業務で、間違いが起きたときに何が起きるかを一覧にすることです。
やり直せる失敗 ★ ここから任せる
取引先に影響する失敗 人が確認してから出す
決算・契約に関わる失敗 ★ 当面は任せない
分類ができていれば、どのツールを選んでも機能します。分類ができていなければ、どのツールを選んでも定着しません。
設計時の原則の1つに、Human Centered(技術は人を置き換えるためではなく、支援するためにある)を置いています。何を任せ、何を任せないかを先に決めるのは、この原則の実務的な形です。
ただし、これは仮説です。
反証:分類する前に、まず触るべき場合があります
はっきりした限界があります。何ができるか分からない段階で分類しようとすると、分類が終わりません。
生成AIで何ができるかは、使ってみないと分かりません。触ったことのない人が、任せる範囲を決めることはできないのです。
触ったことがない ★ まず触る。分類は後
一度触った ★ 分類が効く
目安は、自分で5回以上使ったことがあるかどうかです。ない場合は、分類より先に触る時間を取ってください。
もう1つ。AIを使わないという判断が正しい業務もあります。件数が少なく、1件あたりの判断が重い仕事では、人が全部やるほうが速く、確実です。使えるものを全部使うことが目的ではありません。
次回
ここまでは、使おうとしている会社の話でした。一方で、使うこと自体に抵抗がある場合があります。
AIは人間を代替する脅威だ、という受け止めは、いまも根強く残っています。
次回は、そこを扱います。拒んでいるのは、技術か、変化そのものか。
この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。