読了 約6分 技術

拒んでいるのは、技術か、変化そのものか

AIへの抵抗を「理解不足」で片付けると、何も進みません。拒まれている対象を分けて考えます。

連載 作る力が、伝わらない 第2話/全5話
AIへの抵抗が、技術そのものではなく、評価の基準が変わることへの抵抗である構造を示した図
目次
  1. 「AIは人を代替する」という受け止め
  2. 拒まれている対象を分けます
  3. 評価の基準が変わる、とはどういうことか
  4. 「勘と根性」は、何を守っているのか
  5. ALTEVOはこう考えています
  6. 反証:順序を守っても、進まない場合があります
  7. 次回

前回、AI活用の差は技術力ではなく、任せる範囲を決められるかどうかにあると書きました。ただ、そもそも使うこと自体に抵抗がある場合があります。

「AIは人を代替する」という受け止め

世界がAIによる生産性の向上に進むなかで、日本には「AIは人間を代替する脅威だ」という受け止めが根強く残っている、と指摘されてきました。

この抵抗を「理解不足」として扱うと、対策は「説明する」「研修する」になります。それで解けるなら、すでに解けているはずです。

別の見方をします。拒まれているのは、技術ではないかもしれません。

拒まれている対象を分けます

拒まれている対象は3つに分かれる

① 技術そのもの     精度が信用できない、間違えると困る
② 仕事が消えること  自分の役割がなくなる
③ ★ 評価の基準が変わること

①は、実際に試せば判断できます。②も、よく語られます。

③が、最も語られず、最も効いています。

評価の基準が変わる、とはどういうことか

長く働いてきた人は、自分が何で評価されてきたかを知っています。

速く正確に処理できる
過去の経緯を覚えている
社内の誰に聞けばいいか分かる
手を動かす量が多い

これらの一部は、AIが肩代わりできます。

肩代わりされた瞬間、その人がこれまで積んできた優位が、優位でなくなります。仕事が消えるわけではありません。消えるのは、その人が評価されてきた根拠のほうです。

前の連載で、似た構造を書きました。年長者が知識の宝庫だった時代が終わり、権威の根拠だった情報の非対称が消えた、という話です。AIは、その変化を加速させます。

この状況で抵抗するのは、合理的な反応です。理解が足りないのではなく、理解したうえで不利益を予期しています。

「勘と根性」は、何を守っているのか

AIを否定し、経験と根性に頼り続けることが、過重労働と競争力の低下を招いている、という指摘があります。

指摘としては正しいと思います。ただ、なぜそうなるのかの説明にはなっていません。

経験と勘は、その人が長い時間をかけて積んだものです。それを「非効率」と呼ばれれば、積み上げを否定されたように聞こえます。守っているのは効率の低い方法ではなく、自分の立場のほうです。

これは道徳や意識の問題ではなく、価値証明の失敗という経営課題だと考えています。

ALTEVOはこう考えています

抵抗を解こうとしないほうがよいと考えています。

説得しても、不利益の予期は消えません。消すには、不利益が実際に起きないことを示す必要があります。

私たちが設計の方針として置いているのは、次の順序です。

1  ★ その人が持っている判断を、先に記録する
   AIに置き換える前に、何を持っているかを可視化する
2  その記録を、組織の資産として扱う
   ★ 残したこと自体が評価される状態をつくる
3  そのあとで、定型部分をAIに任せる

順序が逆だと、抵抗は必ず起きます。先にAIを入れて、後から「あなたの知識も記録しておいてください」と頼めば、自分を置き換えるための作業を自分でやれ、と言われているのと同じです。

デジタル温故知新という言い方をしていますが、中身はこの順序のことです。過去を否定せず、価値として確定してから、新しい道具を足す。

ただし、これは仮説です。

反証:順序を守っても、進まない場合があります

限界を書きます。記録を先に取るやり方は、時間がかかります。

競合がすでにAIで処理速度を上げている局面では、丁寧な順序を踏んでいる間に差が開きます。この場合、順序より速度を優先する判断が正しいことがあります。

もう1つ。記録を取ったからといって、評価されるとは限りません。「残したこと自体が評価される状態」をつくるのは、仕組みではなく人事の判断です。私たちが設計できる範囲の外にあります。

そして、抵抗の中身が②(仕事が消える)である場合、この順序は効きません。実際に業務量が減るなら、記録しても立場は戻りません。その場合に必要なのは、配置転換の計画であって、記録の設計ではありません。

次回

AIを使えるようになっても、作ったものの価値が伝わるとは限りません。

技術はあるのに名前が知られていない企業が、日本には数多くあります。

次回は、そこを扱います。技術があるのに名前が売れないのは、なぜか。

次回

次回は「ブランド資産・知的財産の無防備」を扱います。技術があるのに名前が売れないのは、なぜか。

この課題に、ALTEVO は2つの形で向き合っています。

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